エンジニアの給料は安すぎ?求人78件と国税庁データで見る原因と上げ方
構造を知れば抜け出せる
執筆・監修: 徐 聖博/株式会社シンシア 代表取締役社長
エンジニアの給料は安すぎるのか。情報通信業の平均給与は682万円と高い一方、ナミノリの求人78件では未経験可の下限は中央値300万円でした。会社規模で1.7倍違う年収差の正体と、安い原因のセルフチェック、上げる手順を解説します。
目次
エンジニアの給料は安すぎ?求人78件と国税庁データで見る原因と上げ方
「エンジニアは稼げると聞いて入ったのに、給料が安すぎる」。そう感じている人は少なくありません。
先に結論を書きます。エンジニアという職業は、平均で見れば安くありません。 国税庁の調査では情報通信業の平均給与は682万円で、全業種の平均(487万円)より約200万円高い水準です。
それでも「安すぎ」と感じるのには理由があります。ナミノリがこれまでに掲載した求人78件を数えると、未経験から応募できる求人の年収の下限は、中央値で300万円(月給25万円)でした。入口の給料は平均よりずっと低く、そこからどの会社で、どの役割に上がるかで差が開きます。
この記事では、公的統計と求人データをもとに、給料が安くなりやすい会社の条件と、自分の給料が安いのかを確かめる方法、上げるための手順を示します。
「エンジニアの給料は安すぎる」は本当か
まず平均です。国税庁の「令和7年分 民間給与実態統計調査」(2026年9月公表)では、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は487万円でした。業種別に見ると、情報通信業は682万円です。
| 区分 | 平均給与 |
|---|---|
| 全業種 | 487万円 |
| 情報通信業 | 682万円 |
| 金融業,保険業 | 726万円 |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 854万円 |
出典: 国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」(業種別の平均給与)
職種で見ても同じです。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、システムエンジニア(受託開発)の平均年収は578.5万円、平均年齢は37.1歳でした(令和7年賃金構造基本統計調査を加工した値。2026年8月に確認)。
職業として「安すぎる」とは言えません。では、なぜ安く感じる人が多いのか。原因は平均ではなく、入口の給料と勤め先の規模にあります。
求人78件で見た、入口の給料
ナミノリに掲載した求人の年収欄を集計しました。
- 対象: 2024年7月〜2026年7月に登録した求人78件(31社)。テスト用・重複の3件と時給の1件を除いています。運営会社シンシアの求人を含みます
- 年収表記42件はそのまま、月給表記36件は12倍して年額にしました(賞与は含みません)
| 区分 | 件数 | 年収の下限(中央値) |
|---|---|---|
| 全体 | 78件 | 300万円 |
| 未経験から応募できる求人 | 27件 | 300万円 |
| 指標 | 値 |
|---|---|
| 上限の中央値(上限ありの68件) | 576万円 |
| 下限が500万円以上 | 4件 |
| 上限が1000万円以上 | 3件 |
下限300万円は、月給にすると25万円です。平均の487万円とも、SEの平均578.5万円とも、200万円以上の差があります。
一方で、上限の中央値は576万円でした。入口は300万円前後、上限は500万〜600万円台。中央値どうしで比べると、下限と上限の間には約280万円の幅があります。この幅を上がっていけるかどうかが、「安すぎ」から抜けられるかの分かれ目です。
求人を比べるときは、月給表記に注意
78件のうち36件は月給で書かれていました。月給表記の求人は、賞与が別に支払われることが多く、年収表記の求人とそのまま比べると安く見えます。
比べるときは、次のように年額にそろえてください。
- 月給 × 12 + 賞与(「賞与年2回」「前年実績◯か月分」などの記載から)
- 固定残業代が含まれていれば、その金額と時間を差し引いて基本給を確かめる
給料が安くなりやすい会社の条件
会社の規模で、平均給与は1.7倍違う
同じ国税庁の調査から、勤め先の規模(株式会社の資本金)別の平均給与を並べます。
| 資本金 | 平均給与 | うち賞与 |
|---|---|---|
| 2,000万円未満 | 416万円 | 36万円 |
| 1億円以上10億円未満 | 509万円 | 86万円 |
| 10億円以上 | 692万円 | 159万円 |
出典: 国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」第12表(1年を通じて勤務した給与所得者、男女計)
資本金2,000万円未満と10億円以上では、平均給与に276万円の差があります。そのうち123万円、差の約45%は賞与の差でした。月給だけを比べると差は小さく見えますが、年収では大きく開きます。
小さな会社が悪いという話ではありません。ただ、賞与の原資が小さい会社では、成果を出しても年収に反映されにくい構造があります。
多重下請けの下の階層にいる
IT業界では、発注元から一次請け、二次請け、三次請けへと仕事が流れることがあります。間に入る会社が増えるほど、発注元が払った金額から中間マージンが引かれ、現場のエンジニアに回る原資は小さくなります。
自分の会社が何次請けかを知らないなら、まず上司や営業担当に聞いてみてください。
SESで、還元率が公開されていない
SES(客先常駐)では、客先が払う月単価のうち何割が給与に回るか(還元率)が会社によって違います。ナミノリの求人78件のうち、還元率を書いていた求人は3件で、「8割超」「8割以上」「最大85%」と書かれていました。これらの年収レンジは450万〜900万円、月給表記の1件は384万〜960万円(賞与別)です。
還元率を公開していない会社では、自分の単価に対していくら受け取っているかが分かりません。例えば月単価60万円の案件で月給25万円なら、還元率は4割程度です。SESの仕組みはSESの年収はいくら?で、会社の見分け方は優良SES企業の見分け方で詳しく扱っています。
給与テーブルに上の等級がない
社内の等級表に「リーダー」「マネージャー」などの上の等級がなければ、どれだけ成果を出しても上限に当たります。ナミノリの求人で上限が1000万円以上だった3件のうち2件は、リードエンジニアとプロダクトマネージャーの募集でした。上の役割が用意されているかどうかで、上がれる天井が決まります。
自分の給料が安いのかをセルフチェック
次の5項目を確かめてください。
| 確かめること | 調べ方 | 当てはまる場合に考えられる原因 |
|---|---|---|
| 自分の会社は何次請けか | 上司・営業担当に聞く | 多重下請けで原資が小さい |
| 自分の案件の月単価 | SESなら営業担当に聞く。教えてもらえない会社もある | 還元率が低い |
| 同じ職種・経験年数の求人の年収レンジ | 求人サイトで3〜5件見る(年額にそろえる) | 相場より低い |
| 社内の一番上の等級の年収 | 等級表・評価制度の資料を見る | 給与テーブルの天井が低い |
| 3年間の昇給額 | 給与明細を並べる | 昇給の仕組みが機能していない |
2つ以上当てはまるなら、スキルではなく環境が給料を抑えている可能性が高いです。スキル面の原因と対策はエンジニアが稼げない原因にまとめています。
給料を上げるための5つの手順
1. 自分の単価と、相場を知る
最初にやるのは現状の把握です。SESなら自分の月単価を聞き、還元率を計算します。そのうえで、同じ職種・同じ経験年数の求人を3〜5件見て、年額にそろえた年収レンジと比べます。
2. 役割を一段上げる
求人の上限に近づく条件は、多くの場合「役割」です。実装だけを担当しているなら、設計、見積もり、顧客との打ち合わせ、後輩のレビューなど、一段上の仕事を取りに行きます。社内で上がれなくても、この経験は転職時の年収交渉の材料になります。
3. 需要の高い領域に寄せる
クラウド、セキュリティ、データ基盤、AIの業務導入などは、人が足りない領域です。いまの仕事の延長で学べるものから始めると、実務の実績にもつながります。ナミノリの無料講座では、AWS・セキュリティ・データモデリングなども学べます。
4. 賞与と等級のある会社を選ぶ
転職するなら、提示年収だけでなく、賞与の実績と等級表の有無を確かめてください。統計で見たとおり、規模による年収差の半分近くは賞与です。
5. 2〜3年の実績を持って転職する
在籍中の昇給より、転職時の年収交渉のほうが上げ幅は大きくなりやすいです。ただ、1年ごとの転職は経験の浅さを疑われます。2〜3年で設計やリードの実績を作ってから動くのが、上げ幅を最大にするやり方です。職務経歴書の書き方は職務経歴書の書き方を参考にしてください。
年収1000万円まで視野に入れるなら、どの役割で届くのかをエンジニアで年収1000万は可能?で求人データとともに整理しています。
給料を上げたい人がやってはいけないこと
- 理由が分からないまま我慢を続ける: 構造的に上がらない会社では、待っても上がりません
- 「未経験でも高収入」だけで飛びつく: 下限と上限の幅が極端に広い求人は、上限が何の役割の額かを確かめてください。見分け方は未経験向けのエンジニア求人は怪しい?で解説しています
- 月給だけで比べる: 賞与と固定残業代を含めて年額にそろえないと、安い求人を高く見誤ります
よくある質問
エンジニアの平均給与は?
国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」では、情報通信業の平均給与は682万円です。厚生労働省のjob tagでは、システムエンジニア(受託開発)の平均年収は578.5万円(平均年齢37.1歳)でした。いずれも全業種の平均(487万円)を上回ります。
エンジニアの年収が低いのはなぜですか?
職業としてではなく、入口の給料と勤め先の条件で低くなります。ナミノリの求人78件では、未経験から応募できる求人の下限は中央値300万円でした。さらに、多重下請けの下の階層にいる、SESの還元率が低い、賞与や上の等級がない会社にいる、といった条件が重なると上がりにくくなります。
給料が安くても続けるべきですか?
最初の2〜3年は、実務経験を積む期間と割り切る考え方もあります。ただ、その間に設計や見積もりなど一段上の仕事を経験できないなら、続けるメリットは小さくなります。3年目を目安に、相場と比べて環境を見直してください。
20代で年収500万は高いほうですか?
高いほうです。全世代の平均給与が487万円なので、20代で500万円は平均を上回ります。ナミノリの求人でも、下限が500万円以上の求人は78件中4件だけでした。
まとめ
- エンジニアは職業として安くない。情報通信業の平均給与は682万円、全業種平均は487万円
- 安く感じる原因は入口の給料。未経験可の求人の下限は中央値300万円(月給25万円)
- 勤め先の規模で平均給与は416万〜692万円と1.7倍違い、差の約45%は賞与
- 多重下請け、還元率の非公開、上の等級がない給与テーブルが重なると上がりにくい
- 単価と相場を知る → 役割を上げる → 需要の高い領域に寄せる → 賞与と等級のある会社を選ぶ、の順で動く
まずは、いまの自分の年収を求人の相場と比べるところから始めてください。ナミノリの求人一覧では、年収レンジと仕事内容をそろえて確認できます(現在の掲載は運営会社シンシアの募集です)。役割を上げるための学び直しは、無料の会員登録をすると講座の受講記録を残しながら進められます。
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