文系がITエンジニアになるには?活かせる強みと成功のためのポイント3つ
執筆・監修: 徐 聖博/株式会社シンシア 代表取締役社長
ITエンジニアは理系出身者だけの仕事ではありません。近年では、文系出身のITエンジニアも活躍の場を広げています。
目次
文系がITエンジニアになるには?活かせる強みと成功のためのポイント3つ

「文系だからITエンジニアは無理だ」。そう思い込んでいる人は多い。だが採用の現場を見ると、理系の学位が条件になっていることは、思うほど多くない。それどころか、文系で培った力がそのまま武器になる場面がある。向いていないという評判と、活躍している現実。このずれがどこから来るのか、まだ説明がついていない。
文系出身でもITエンジニアになれる!

かつてのIT業界は、ハードウェアを組み上げる技術者の世界だった。そこでは、理系の知識がものを言った。ところが、ソフトウェアが主役になるにつれて、求められる力が変わってきた。人の要望を聞き取り、複雑な事情を整理し、多角的に捉える——こうした場面が増えるほど、文系で鍛えた力が効いてくる。実際、文系出身のエンジニアは、すでにあちこちで働いている。
文系出身はITエンジニアになるのはやめとけと言われる理由

活躍している人が現にいる。それなのに、「文系はITエンジニアに向いていない」「やめておけ」という声は、いまも消えない。
なぜ、そんな声が出るのか。理由をたどると、どれも「イメージ」に行き着く。
文系は論理的思考が苦手というイメージがあるため
文系は感性や情緒で動く——そう見られがちだ。かたやエンジニアの仕事には、論理的に筋を通す力が要る。この二つを並べれば、文系は向いていないという結論が、いかにも自然に見えてしまう。
だが、論理的思考は生まれつきの資質ではない。訓練で伸びる。プログラミングの学習や、筋道を立てて考えるトレーニングを重ねれば、後からいくらでも身につく。分かれ目は理系か文系かではなく、苦手だと決めつけて手を止めるかどうかにある。
ITや数学の知識が足りないというイメージがあるため
エンジニアの仕事には、数学や情報科学の知識が欠かせない。文系出身者は、その土台が足りていないと見られやすい。
もっとも、足りないなら埋めればいい。必要な知識は、プログラミングスクールやオンライン学習でひととおり手に入る。未経験から始めても、積み重ね次第で十分に追いつける。
文系出身がITエンジニアとして活かせる強み

向いていないと誤解されがちな文系だが、裏を返せば、文系だからこそ持てる強みがある。大きく分けて三つ。どれも、さきほど「苦手」とされた場所のすぐ隣に立っている。
コミュニケーション能力
システム開発は、一人で完結する仕事ではない。顧客との打ち合わせがあり、チーム内での情報共有がある。人の間に立って話をまとめる力が高ければ、それだけで開発は滑らかに進む。文系出身者が得意としてきたのは、まさにこの部分だ。
顧客の要望を丁寧に聞き取る。噛み砕いてチームに伝える。そうした場面は、開発の一日のなかに何度も訪れる。
多角的な視点と発想力
関心の幅が広く、一つの物事を複数の角度から眺める。文系にはそういう癖がある。この癖が、使う人の本当の要求を掘り当て、使いやすいシステムへと開発を導く。
経済学部で市場の動きを読んできた人なら、その分析を武器に、事業の数字に効くシステムを提案できる。社会学部で人の行動を追ってきた人なら、ユーザーの心理を汲んで、直感的に触れるUI/UXを設計できる。
文章力や表現力、語学力
エンジニアの手元にあるのは、コードだけではない。仕様書や設計書を書き、プレゼンで説明し、顧客とメールを交わす。言葉で正確に伝える場面は、思っている以上に多い。国境をまたぐプロジェクトなら、語学力もそのまま戦力になる。
文学部で言葉を扱ってきた人なら、読み手に迷いを与えないドキュメントを書き、チーム全体の効率を押し上げられる。英語が達者なら、海外の開発チームとのやり取りも詰まらずに進む。
ITエンジニアに向いている人の特徴

強みは出身で決まる話だった。向き不向きは、もう少し別のところにある。文系理系を問わず、エンジニアに向く人には共通の顔つきがある。
論理的思考力と問題解決能力がある人
複雑なシステムを組み、不具合を追う。そこでは、論理を頼りに問題を解く力が欠かせない。何かが起きたとき、原因はどこかと切り分け、正しい手を打つ——この力の有無が、エンジニアの日々を大きく左右する。
好奇心旺盛で新しい技術を学ぶ意欲がある人
IT業界では、新しい技術が次々と現れては、古いやり方を押しのけていく。追いかけ続ける意欲と、変化を面白がる姿勢。これがある人は、放っておいても伸びていく。
AIや機械学習のような新しい波にアンテナを張り、進んで手を出しておけば、それが次のサービスの種になる。
困難な課題にも諦めずに取り組める人
開発を進めれば、どうにも解けない課題に突き当たる日がくる。そこで投げ出さず、仲間と手を組んで抜け道を探し、最後までやり切る。この粘りが、プロジェクトの成否を分ける。
答えが見つかるまで手を止めない。その姿勢こそ、エンジニアとして長く走り続けるための土台になる。
ITエンジニアを目指すために必要なスキル・知識

文系からエンジニアを目指すとき、身につけるべきものは一つや二つではない。範囲は広い。ただ、いま手元になくても慌てることはない。一つずつ補っていけば、たどり着ける距離ではある。
ITの基礎知識
エンジニアとして働くには、コンピュータやネットワーク、データベースといったITの土台を分かっている必要がある。こうした知識は、専門学校やオンライン学習、書籍で手に入る。
基本の用語や概念が頭に入っていると、他のエンジニアとの会話が噛み合い、技術的なつまずきもほどけやすくなる。OSやデータベースの仕組みが分かれば、開発の手際は上がる。ネットワークの基礎は、セキュリティ対策を考えるときの足場になる。
プログラミングスキル
開発の中心にあるのは、やはりプログラミングの力だ。ここは避けて通れない。言語は数多くあり、それぞれ得意とする領域が違う。何を作りたいのかを先に決め、それに合う言語を選んで学ぶ。順番はこちらが正しい。
Webアプリケーションを作りたいなら、JavaやPython、Rubyあたりは需要が高く、身につければキャリアの幅が広がる。モバイルアプリに惹かれるなら、SwiftやKotlinが選択肢に入る。
ロジカルシンキング
入り組んだ開発のなかで問題を解き、無駄のないコードを書く。そのどちらにも、筋道を立てて考える力が要る。物事を順番に並べ、論理で結論まで運ぶ癖は、バグを見つけて直すときにも、仕様を設計するときにも効いてくる。
この力は、プログラミングの学習だけで身につくものではない。書籍やトレーニングでも鍛えられる。たとえばフローチャートに描き出せば、処理の流れが目で追えるようになり、論理のほころびが見つけやすくなる。
最新技術に関する情報収集力
技術もトレンドも、立ち止まってはくれない。次々と入れ替わる。だからこそ、最新の情報を自分から拾いにいく力が、この世界で生き残る条件になる。技術ブログ、ニュースサイト、専門誌。手元の知識を絶えず更新し続ける人だけが、競争のなかに残っていく。
文系出身がITエンジニアになるためのステップ

では、文系からエンジニアへは、どんな道順で近づいていくのか。大きくは、次の三つの段を上がっていくことになる。
1. プログラミング言語を決めて基礎学習
2. 資格取得にチャレンジ
3. ポートフォリオ作成で復習と実践
ステップ1:プログラミング言語を決めて基礎学習
はじめの一歩は、学ぶ言語を一つに絞ることだ。あれこれ手を広げず、まず一つ選んで基礎から始める。
言語は数多いが、初心者と相性がいいのはPythonやRuby、JavaScriptあたりだ。どれも学びはじめのハードルが低く、Web開発やデータ分析まで幅広く使われている。
| 言語 | 特徴 | 活用できる分野 |
|---|---|---|
| Python | ・シンプルで初心者にやさしい文法 ・英語のように読みやすく、学習コストが低い ・豊富なライブラリが利用可能で、幅広い用途に対応 |
・データ分析・機械学習 ・Web開発 ・自動化 ・IoT開発 |
| Ruby | ・シンプルで直感的な文法 ・Webアプリケーション開発に強いフレームワーク「Ruby on Rails」が利用可能 |
・Webアプリケーション開発 ・プロトタイプ開発 |
| JavaScript | ・インタラクティブなWebページやアプリ開発に必須の言語 ・ブラウザで動作するため、インストール不要ですぐに学べる ・フロントエンドからバックエンドまで幅広い開発に対応可能(Node.js) |
・Web開発 ・モバイルアプリ開発 ・ゲーム開発 |
言語を決めたら、独りで手探りするより、オンライン学習サイトやプログラミングスクールで体系立てて学ぶほうが早い。
ステップ2:資格取得にチャレンジ
基礎が固まってきたら、資格に挑んでみる番だ。資格は、自分のスキルを他人の目に見える形で証明してくれる。転職の場面では、それがそのまま説得力になる。しかも、資格を取るための勉強そのものが、知識を体系立てて深める機会になる。
ITパスポートや基本情報技術者試験は、エンジニアへの登竜門とされる資格で、就職活動でも有利に働く。出題範囲はITの基礎を広く覆っていて、学ぶうちにシステム開発の全体像が見えてくる。
さらに応用情報技術者試験やデータベーススペシャリスト試験といった、より専門的な資格へ進めば、その先のキャリアアップも見えてくる。
ステップ3:ポートフォリオ作成で復習と実践
覚えた知識は、しまい込んでいても身につかない。Webサイトやアプリを実際に作り、ポートフォリオとしてまとめてみる。ポートフォリオは、自分のスキルと実績を相手に見せるための、何よりの道具だ。作る過程で知識は外に出され、実践的な腕が磨かれ、理解はさらに深まっていく。
作ったWebサイトやアプリのソースコードをGitHubで公開したり、実際に動くデモサイトを用意したりすれば、採用担当者の目にスキルがはっきり届く。手を動かすうちに、新しい技術に挑む機会が生まれ、自分の得意分野も見えてくる。
文系出身が活躍しやすいITエンジニアの職種

「ITエンジニア」と一言でくくっても、その中身は分野ごとにまるで違う。なかには、文系の強みがとりわけ映える職種がある。
Webエンジニア
WebエンジニアはWebサイトやWebアプリケーションを開発し、運用する職種だ。表側を担うフロントエンド、裏側を支えるバックエンドなど、専門はさらに枝分かれしている。
ここでは、さきほど挙げた三つの強みがそのまま働く。顧客の要望を聞き取り、要件へ落とし込む段では、コミュニケーション能力がものを言う。使う人の目線で見やすいサイトを設計するには、多角的な視点が要る。技術ドキュメントを書き、他のエンジニアと共有する場面では、文章力が支えになる。
セールスエンジニア
セールスエンジニアは、IT製品やサービスを顧客に提案する営業職だ。技術の知識だけでは足りない。顧客と話す力、プレゼンで納得させる力が要る。ここは、文系が長く磨いてきた領域そのものだ。相手のニーズを的確に掴み、最適な解を差し出せる。
営業として動くうえで、顧客との信頼関係は土台になる。相手の事業上の悩みを理解し、それを解くシステムを提案する場面で、コミュニケーション能力が生きる。製品の長所も短所も、噛み砕いて伝えるプレゼンの力も欠かせない。
ITコンサルタント
ITコンサルタントは、企業の経営課題を解くために、IT戦略を描き、システム導入を支える。ビジネスの知識に、ITの幅広い知識が重なる。多角的な視点、分析力、コミュニケーション能力——文系が持ち寄れるものが、ここでは一度に求められる。
企業の現状を読み解き、最適なIT戦略を立てる段では、多角的な視点が生きる。導入プロジェクトを滞りなく進めるには、関係者との間を取り持つ力が要る。進捗やリスクを管理する場面では、分析力や問題解決能力が問われる。文系の持ち味を発揮できる機会は、数えきれないほど多い。
文系出身がITエンジニアとして成功するための3つのポイント

強みも職種も見えてきた。あとは、活躍を長続きさせるための勘どころだ。文系出身者が押さえておきたい点は、大きく三つある。
ポイント1:足りない知識やスキルは学んで補う
文系から入ると、ITの基礎知識にせよ論理的思考力にせよ、最初は足りないものばかりが目についてしまう。
だが足りなさは、埋めれば消える。進んで学び、欠けている知識やスキルを補っていけば、活躍の場に立てる。オンライン学習プラットフォームやプログラミングスクールを使い、自分に要るものから順に身につけていけばいい。
ポイント2:最新知識を常に学習し続ける
IT業界の移り変わりは速い。だから、最新技術やトレンドにアンテナを張り、学び続ける姿勢が要る。技術ブログ、ニュースサイト、業界イベント——情報の入り口をいくつか持ち、手元を絶えず更新していく。新しい技術を一つ覚えるたびに、自分の市場価値も上がっていく。
AIや機械学習、クラウドコンピューティング、ブロックチェーン。いま注目を集める技術や、自分が惹かれる分野に手を伸ばせば、キャリアの幅はさらに広がる。
ポイント3:周りの人と協力し、学び合う環境を作る
エンジニアの仕事は、周りとの協力と情報共有の上に成り立つ。自分から話しかけ、学び合える環境をつくれば、成長の速度は目に見えて上がる。勉強会やコミュニティに顔を出し、同僚や先輩に質問を重ねる。そのたびに、新しい知識やスキルが手に入る。
他のエンジニアからコードレビューを受け、意見を交わすことも、腕を上げる近道になる。周りと手を取り合い、共に伸びていく——この姿勢が、エンジニアとして成功する人に共通している。
ITエンジニアについて気になる疑問

最後に、ここまでで触れきれなかった疑問を、いくつか拾っておく。
Q1. ITエンジニアの中で文系が占める割合は?
ITエンジニア全体の正確な文系出身者の割合を把握することは難しいですが、近年増加傾向にあることは確かです。 IT業界の多様化に伴い、文系出身者の強みが活かせる場面が増えているため、今後さらに割合は増加していくと予想されます。 企業によっては、文系出身のエンジニアを積極的に採用しているケースもあります。
Q2. ITエンジニアの具体的な仕事内容は?
ITエンジニアの仕事内容は多岐に渡ります。 システム開発、Webサイト制作、アプリ開発、ネットワーク構築、データベース管理、セキュリティ対策など、様々な分野があります。 それぞれの専門分野によって必要なスキルや知識も異なるため、 自分の興味や適性に合わせて、自分に合った仕事内容を見つけることが重要です。
Q3. ITエンジニアの平均年収は?
ITエンジニアの平均年収は、職種や経験、スキルによって大きく異なります。 厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、システムエンジニアの平均年収は約500万円です。 しかし、これはあくまで平均値であり、経験やスキル、企業規模などによって大きく変動します。 例えば、高度な専門知識やスキルを持つエンジニアは、1000万円を超える年収を得ているケースもあります。
一般的には、他の業種と比較して高収入であると言われていますが、常にスキルアップを図り、市場価値を高めていくことが重要です。
まとめ:文系出身でもスキルを磨けばITエンジニアになれる!

「文系だからITエンジニアは無理だ」。はじめにそう思っていたなら、いまは少し違って見えているはずだ。向いていないという評判の正体は、たいてい古いイメージにすぎなかった。コミュニケーション、多角的な視点、文章力——文系が積み上げてきたものは、そのまま現場の武器になる。あとは、足りない知識を一つずつ埋めていくだけだ。
少しでも心が動いたなら、まずはプログラミングに触れてみるのがいい。無料の学習サイトやアプリはいくらでもあり、気軽に試せる。踏み出した一歩の先に、思ってもみなかった道が開けているかもしれない。
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